大腸菌の学名の謎に迫る!|学名の正式な読み方や由来とは?

微生物関連の仕事をしていると大腸菌の学名“Escherichia coli”を良く目にすると思いますが、普段の会話の中では「大腸菌」、「イー・コリー」と呼ぶことがほとんどで、実は学名の正式な読み方や由来を知らないという方が多いのではないでしょうか?
筆者もこの学名を初めて目にした25年前から現在に至るまで、“Escherichia ”を口から発したことはほとんどありません。いま思い返すと、筆者が過去に出会った外国人留学生の方たちも同じで、ほぼ100%「イー・コリー(またはコーライ)」と呼んでいました。ここまで属名(人で言う苗字)を略されてしまうと、もはや「イー・コリー」がニックネームのようにすら思えてしまいます。
 
さて、ここで問題です。“Escherichia ”は何と発音するでしょうか?
①エシェリヒア
②エスケリキア
③エシェリキア
 
 
 
 
答えは…、全部正解です。どれも間違いではありません。
 
Escherichia”という属名は、大腸菌の発見者であるオーストリアの小児科医テオドール・エシェリヒ (Theodor Escherich) に由来し、それを学名のためにラテン語っぽく変化させたものになります。“coli ”は大腸 “colon”の属格であり、「大腸の」を意味します。
 
語源を重視:エシェリヒア(・コリー)
ラテン語読み:エスケリキア(・コリー)
英語読み:エシェリキア(・コーライ)
 
Escherichia coliを日本語に訳すと、「大腸のエシェリヒ菌」、「エシェリヒ先生が大腸から見つけた菌」といった感じになります。
 
それでは、他の菌についても学名を日本語に訳していきましょう。今回は食中毒菌シリーズです。
 

学名日本語の意味
Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌)黄金色の葡萄の房の形をした球菌
Salmonella spp. (サルモネラ属菌)細菌学者サルモンが見つけた菌
Bacillus cereus (セレウス菌)蝋のようなコロニーを形成する小さな棒状の菌
Vibrio parahaemolyticus (腸炎ビブリオ)溶血毒を産生して鞭毛で激しく振動する菌
Clostridium perfringens (ウェルシュ菌)人体の組織を破壊する小さい捻じれた菌(「ウェルシュ菌」は病理学者ウェルチに由来)
Campylobacter jejuni /coli (カンピロバクター・ジェジュニ/コリ)空腸/大腸から見つかった湾曲した棍棒のような菌
Listeria monocytogenes (リステリア・モノサイトゲネス)単球増加症を引き起こす菌(「リステリア」は外科医ジョゼフ・リスターを記念して献名)

 
学名は覚えていても、どんな特徴を有する菌だったか忘れてしまうことってありますよね。そんなときは菌の学名の由来まで覚えてみてはいかがでしょうか。それを調べながら菌が発見された経緯や細菌分類体系の歴史などを知ることで、きっと今よりも微生物学を深く、そして楽しく学べるようになるはずです。
 
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