性器クラミジア感染症の検査方法について
性器クラミジア感染症は、日本で最も感染者数の多い性感染症(STI)で、多くの人々に感染する可能性があります。クラミジア感染症は多くの場合無症状で進行するため、気づかないうちに感染を広げてしまうことがあります。そのため適切な検査方法で、定期的な検査を受けることが重要です。
クラミジアとは?
クラミジアは、Chlamydia trachomatis (クラミジア トラコマチス)という細菌で、性器クラミジア感染症の原因菌となります。細菌と聞くと培養検査が一般的ですが、クラミジアはほかの多くの細菌とは異なり、通常の培養法では培養出来ません。
その理由として、クラミジアは偏性細胞内寄生菌であり、細胞内でのみ増殖することが出来るという特徴を持っているからです。そのため、通常の人工培地には発育できないのです。
では、クラミジアの検査はどのように行われているのでしょうか。
大きく分けて、3つの方法があります。
クラミジアの検査方法
1.遺伝子検査(PCR検査)
遺伝子検査は、微量のDNAやRNAを増幅して検出する検査方法で、感染している細菌やウイルスのDNAやRNAを検出することができます。他の検査方法に比べて非常に高い感度を持ち、少量の病原体でも検出することが可能です。これにより、感染の初期段階や症状がない場合でも、クラミジアを検出することができます。ただし、遺伝子検査は非常に感度が高いため、死菌を検出してしまうこともあります。これは、治療後にクラミジアの遺伝子が体内に残っている場合に、遺伝子検査で陽性となる原因にもなるので注意が必要です。
検体として、男性では尿、女性では膣や子宮頸管からの分泌物を検査します。女性でも尿検体が利用可能ですが、分泌物のほうが検出感度は高いとされています。
2.酵素免疫測定法(抗原検査)
抗原検査は、クラミジアに特有の抗原を検出する検査です。検査方法にはELISA法やイムノクロマト法があり、どちらも菌体自体を検出対象としているため、現在クラミジアに感染しているのかを検出することが出来ます。検体は遺伝子検査と同様、尿や分泌物を使用します。抗原検査は操作が簡便でコストが低いという利点がありますが、遺伝子検査と比べ感度や特異度が劣るため感染初期や治療後の判定には注意が必要です。
3.抗体検査
抗体検査は、クラミジアに対する抗体を検出する検査です。抗体は、感染症に対する免疫反応として体内で生成されるタンパク質です。クラミジアの抗体検査は、現在クラミジアにかかっている、もしくは過去に感染していた場合に陽性となります。検査方法は酵素免疫測定法があり、検体には血液が用いられます。
抗体は、治療をしても残存し、また感染初期には検出されない場合があるため、急性感染の診断にはあまり適していません。抗体検査は、特に過去の感染歴を調べる際に有用です。
まとめ
検査方法 | 検体(材料) | 検出対象 | 特徴 |
---|---|---|---|
遺伝子検査 ・PCR法 | 尿、膣や子宮頸管からの分泌物 | クラミジアの遺伝子(DNA,RNA) | ・非常に感度が高い ※感染の有無を判定できるが、死菌を検出してしまうことがある(偽陽性) |
抗原検査 ・ELISA法 ・イムノクロマト法 | 尿、膣や子宮頸管からの分泌物 | クラミジアに特有の抗原(菌体) | ・操作が簡便でコストが低い ※遺伝子検査より感度や特異度がやや劣る |
抗体検査 ・酵素免疫測定法 | 血液 | クラミジアに対する抗体 | ・過去の感染歴を見ることが出来る ※現在の感染との区別がつかないため急性感染の診断には適さない |
性器クラミジア感染症の検査には様々な種類があり、近年では、感度や特異度の高さから遺伝子検査が主流となっています。ただ、検査方法によって検出対象や特徴が異なるため、目的によって使い分けることが重要となります。また、クラミジア感染は無症状の場合が多いため、定期的な検査が推奨されます。通常、クラミジアの潜伏期間は1~3週間とされているため、検査を受けるタイミングとしては感染の機会から1週間程度経過してからが望ましいです。検査結果が陽性であれば、適切な治療を受けることが重要です。また、感染が確認された場合は、パートナーにも知らせ、検査を受けてもらうことが大切です。
性感染症のリスクを減らすためにも、定期的な検査を心がけましょう。
参考文献
性病に関するコラム
>>梅毒の初期症状を見逃さないための重要ポイントを紹介
>>クラミジアとは?|男女別の症状の違いや対策について解説
>>HIV/エイズとは?|感染経路と予防法を理解しよう
>>淋病とは?|感染経路とその予防策について