遺伝子組換え小麦HB4とは?|遺伝子組換え作物(GMO)

遺伝子組換え小麦「HB4」

米国農務省(USDA)は2024年8月27日、アルゼンチンのBioceres Crop Solutions社が開発した遺伝子組換え小麦「HB4」について、米国内での栽培を承認しました。このHB4はヒマワリ由来の干ばつ耐性遺伝子とグルホシネートアンモニウム(除草剤)耐性遺伝子が導入されており、干ばつによる被害を抑えて安定した収量を確保することを目的に開発されました。既に米国では食品医薬品局 (FDA) がHB4を食品および飼料として使用することを2022年に承認しているため、近い将来に米国でHB4の商業栽培が始まると予想されています。日本国内の小麦の自給率は低く、国内需要量の約9割を米国、カナダ、オーストラリアからの輸入に頼っているため、HB4が日本に上陸し、パンやパスタの形で私たちがそれを口にする日はそう遠くないかもしれません。
 
>>ビオセレスの遺伝子組み換え小麦、安全な国内栽培可能=米農務省(ロイター)
 
遺伝子組換え作物については、潜在的なアレルゲン物質の脅威、人体に有害な農薬の残留、生態系への悪影響などの懸念があるため、安全性の審査は慎重に行う必要があります。また、安全であることが証明されたとしても、摂取を避けられるなら避けたいという消費者も日本には多く、現在は大豆やとうもろこしなどで遺伝子組換え表示が義務付けられています。弊社では、遺伝子組換え表示制度が変わった昨年より、大豆ととうもろこしの遺伝子組換え作物(GMO)検査の受注を開始しましたが、世界中の人々にとっての主食である小麦の遺伝子組換えのニュースを見聞きすると、検査項目を拡充していく必要性を感じざるを得ません。
 
遺伝子組換え作物(GMO)検査
>>遺伝子組換え作物(GMO)検査ページはこちら
 

遺伝子組換え作物の生産性の問題

干ばつ耐性遺伝子が導入されたHB4は、従来の小麦と比較して干ばつ時の土地生産性(単位面積当たりの収穫量)が高くなると考えるのが普通ですが、驚くべきことに実際の圃場試験において、HB4は従来の小麦よりも生産性が低かったという報告があります。
干ばつ耐性遺伝子とはそもそも何なのか簡単に説明しますと、この遺伝子の機能によって小麦は乾燥に強くなるのではなく、乾燥を感じなくなります。小麦は干ばつ下において乾燥ストレスを感じると、“成長”よりも“生存”を優先するという生体防御反応が本来働くわけですが、HB4は乾燥を検知しないことでこの生体防御反応を回避し、“生存”よりも“成長”を優先するため、収穫量の点で優位に立つと考えられてきました。HB4を開発した企業はこの優位性を示したデータを公開しましたが、別の調査グループでは矛盾した試験結果が得られているため、HB4に対する懐疑的な意見やさらなる検証の必要性が訴えられています。
 
>>La mentira productiva del trigo transgenico HB4
 
遺伝子組換え作物は世界を食糧危機から救うという大きな期待を背負っていますが、従来の品種と比べて生産性がそこまで高くないことも多く、安全性の問題などデメリットについて議論されることがまだまだ多いように感じられます。
 
今後も弊社では遺伝子組み換え作物に関連する情報を発信してまいります。また、遺伝子組み換え作物(GMO)検査に関するご質問、ご要望もお待ちしております。
 

 
 

youtube