ガラス体積計|全量ピペット及び全量フラスコの扱い方について
ガラス体積計の中でも、全量ピペット及び全量フラスコの扱い方について説明します。
全量ピペットの扱い方
ピペットを使って試料溶液を採取するときには、元の試料や標準溶液が入っている容器に直接ピペットを入れて採取することはできるだけ避けましょう。これは、試料溶液や標準溶液にピペットの先端が入ることによる汚染を回避するためです。そのために、採取する溶液の一部を別のきれいな容器に分取し、この分取した溶液を採取します。なお、別の容器に移して必要な量を採取し終わった残りの溶液は、汚染されている可能性があるため元の容器に戻さず捨てましょう。
※この方法は、手間がかかるため元の溶液(採取した試料溶液や標準原液)を希釈するときにのみ行うことを推奨します。
試料の採取方法
①採取する溶液でピペットの共洗い※1を行います。
②ピペットの先端を液中に20~30 mm程度浸し、溶液を吸い上げます。
③溶液を標線の上10~20 mm程度のところまで吸い上げます。
④ピペットを液面から持ち上げ、ほぼ垂直に保持して先端をその容器の内壁に軽く触れさせながら溶液を少しずつ排出させ、液面(メニスカス)を標線に正しく合わせます。
⑤移し入れる容器の上にピペットを静かに移動し、ピペットの先端をその内壁に軽く触れさせながら溶液を自然落下で排出します。
⑥自然落下での排出が終わったら、そのまま一定時間(5~10秒程度)保ちます。その後、ピペット上端を指でふさぎ、球部を手で握り温めて内部の空気の膨張で先端に残った溶液を押し出します。
⑦ピペットを取り去ります。
全量フラスコの扱い方
全量フラスコは一定濃度の試薬を調製するための理化学ガラス器具です。
<溶液を希釈する場合>
直接、全量フラスコに分取して標線まで希釈します。混合により体積が増加する場合があるので、原液を分取後いきなり標線まで希釈せずに途中で軽く攪拌※2してから標線まで希釈する必要があります。その後、栓をして上下逆さまに2,3回程度攪拌します。
<固体試料を希釈する場合>
固体試料は液体にしてから※3全量フラスコで調製します。そのため、あらかじめビーカー等で試料を溶解させ常温になった後、全量フラスコに溶液を移します。ビーカーの中に溶解した試料が残らないように残液を少量の溶媒で洗い全量フラスコの移す作業を数回繰り返し、標線とメニスカスが一致するまで注意しながら溶解した全ての試料を移します。その後、栓をして上下逆さまに2,3回程度攪拌します。
※1)採取する溶液の少量をピペットに採り、これを水平にし、軸方向に回転するなどしてピペットの内面全体に行き渡るようにしてから捨てます。(同じ操作を3回程度繰り返す)
※2)全量フラスコの一番太い部分で軽く回すように振るのが適切でありますが、少なくとも丸い部分が満たされる前に行うと良いです。
※3)ガラス体積計について知ろう②で記載したとおり全量フラスコの呼び容量は液温20℃で規定されているため、溶解による発熱や吸熱で生じた熱で液温が上昇するのを防ぐためです。また、溶解性の悪い試料もあるため、全量フラスコを溶解器具として使用してはいけません。
参考文献
1. ミニファイル 前処理に必要な器具や装置の正しい使用法、ガラス計量器:ぶんせき2020 2
2. 宮下文秀、質量、容量の正確な計量:ぶんせき 2008 1
3. 【ガラス器具】メスフラスコの使い方-柴田科学株式会社 You Tube動画
>>ガラス体積計|JIS規格に基づくガラス体積計の重要性
>>ガラス体積計|許容誤差について詳しく解説