化学調味料 無添加とは|うま味調味料と違う?分析でうま味の数値化を

食品のパッケージに記された「無添加」の文字
健康志向の方であれば、スーパーやコンビニで商品を手に取る際、一度はチェックしたことがあるはずです。
「無添加」という言葉は、私たちにとって一つの「安心の目印」になっています。
2022年に消費者庁が策定した「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」の猶予期間が終了し、2024年4月から新しいルールが本格的に運用され始めました。
これにより、これまで私たちが目にしてきた「化学調味料無添加」といった表現も、「化学調味料という言葉が現在の食品表示基準に存在しない言葉であることから、事実上、食品パッケージへの使用ができなくなりました。
こちらのコラムでは、そもそも化学調味料とは何か、食品添加物の不使用表示に関するガイドラインや「うま味」成分の分析、原材料と食品添加物の表記方法などについて解説します。

 

肉質・うま味分析
 

「化学調味料」とは何か

化学調味料とは
 
「化学調味料無添加」という言葉をみると、体に良さそうといったイメージが湧くかと思います。
そもそも「化学調味料」とは何なのでしょうか?
実は、「化学調味料」という言葉は、行政や法律で定められた正式な名称ではありません。
その正体は、現在「うま味調味料と呼ばれているものを指します。
もともとは、昭和30年代頃にNHKの料理番組などで、特定の商品名を避けるために使われ始めた「俗称」だといわれています。
その主成分は、グルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムといった、昆布やかつお節などに含まれる「うま味」と同じ成分です。
現代ではサトウキビなどの糖蜜を発酵させて作る手法が一般的となっています。
これらは食品表示基準において食品添加物に分類され、パッケージの原材料欄には「調味料(アミノ酸等)」などと表示されます。
 
 

2024年4月から厳格化「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」

化学調味料不使用・無添加
 
消費者庁のガイドラインにおいて、「化学調味料不使用・無添加」といった表現が厳しく制限されている最大の理由は、それが消費者に誤解を与える不適切な表示とみなされるからです。
2024年4月をもって猶予期間は終了し、現在は新しいルールに沿わない表示は認められません。
具体的には、ガイドラインの「類型2(食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示)」において、人工・合成・化学・天然といった言葉を不使用表示(無添加表示)に用いることが不適切とされています。
「化学調味料」という言葉は、現在の食品表示基準には存在しない曖昧な言葉です。こうした法的な定義がない言葉を使って「無添加」と謳うことは、以下のようなリスクを伴います。
 

ネガティブな先入観の助長と誤認の防止

「化学」という言葉は、消費者に「不自然で体に悪いもの」という負の先入観を与えやすい傾向があります。これにより、添加物を適正に使用している他社製品が不当に危険であるかのような誤解を招き、自社製品が実際よりも過度に優れていると誤認させる(優良誤認)恐れがあると判断されます。
 

「酵母エキス」や「たんぱく加水分解物」への見落とし

これらは法的には「添加物」ではなく「食品」に分類されるため、「化学調味料無添加」と表記された商品にも含まれていることがよくあります。しかし、これらはうま味を補うために精製・加工された原料であり、消費者が「うま味を足す成分が一切入っていない」と期待して購入した場合、実態との事実誤認が生じる可能性があります。
 
 

「うま味」成分の含有量を数値化できます

食環境衛生所では、高性能な分析機器を用い、HPLC法(高速液体クロマトグラフィー)をはじめとする高度な分析技術により、うま味の主要成分であるグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸の含有量を数値化することが可能です。
分析の詳細については、お気軽にお問い合わせください。
目には見えない成分をデータで「見える化」することで、科学的な根拠に基づく「信頼」へと変えるお手伝いをいたします。
 
 

「原材料名」と「食品添加物」の表記方法

原材料名・食品添加物表記方法
 
消費者は、どのようにして商品を選べばよいのでしょうか。
そもそも、原材料と添加物がはっきりと区別されるようになったのは、2015年4月より施行された「食品表示法」がきっかけです。
食品メーカーは、「原材料」と「食品添加物」を誰が見ても分かるよう明確に区別して表示することが義務付けられました。
原材料と食品添加物の表記方法は一つではなく、商品パッケージや表示ラベルの大きさに合わせて、いずれかの方法が使い分けられています。

①記号(「/」など)で区切って表示する方法

加工食品のパッケージで最もよく目にする方法で、原材料名の後に「/(スラッシュ)」などの記号を挿入して、そこから後ろに食品添加物をまとめて表記する方法です。
 
原材料名:じゃがいも(国産)、植物油脂、食塩、デキストリン / 調味料(アミノ酸等)

②改行や段で区分する方法

原材料と食品添加物の間に改行や段落を入れて区別する方法です。
 
原材料名:じゃがいも(国産)、植物油脂、食塩、デキストリン
調味料(アミノ酸等)

③原材料名と食品添加物欄を別に設けて表示する

原材料と食品添加物の記載欄をそれぞれ設けて表示する方法です。
この表示は、消費者にとっては非常にわかりやすい表示方法です。
 
原材料名:じゃがいも(国産)、植物油脂、食塩、デキストリン
添加物:調味料(アミノ酸等)
 
また、「酵母エキス」や「たん白加水分解物」は、法的には「食品添加物」ではなく「食品」に分類されます。そのため、パッケージに「添加物不使用」や「添加物無添加」などと書かれていても、これらが含まれていることは珍しくありません。
これらは濃厚なうま味を与える成分ですが、「ルール上の分類は食品である」という点を知っておくと、より納得感のある商品選びができるようになります。
 
 

まとめ

賢く食品を選ぼう
 
2024年4月のガイドライン完全適用により、食品表示は消費者の誤認を防ぎ、より客観的な事実に基づいた情報提供へとアップデートされました。
これまで目にしてきた「化学調味料」という言葉は、食品表示基準では存在しない曖昧な言葉で、パッケージへの表示は原則として認められなくなります。
原材料ラベルの確認方法を知ることで、消費者はより正確に中身を理解できるようになり、賢く食品を選ぶことができます。
単なる「無添加」というキャッチコピーを鵜呑みにするのではなく、原材料ラベルを自分の目で見て、中身を正しく理解する習慣を身につけましょう。
食環境衛生所では、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸といった「うま味」成分の含有量を数値化することが可能です。
分析を通じて、食の透明性を高めるお手伝いをいたします。
 
肉質・うま味分析

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