残留農薬の検査方法について解説!
弊社が行う残留農薬検査では、通知試験法とSTQ法の2つを採用しています。
通知試験法は厚生労働省が定める最も標準的な試験法であり、根拠としての信頼性が高いのが特徴です。
STQ法は通知試験法に比べ前処理操作がより簡易的な試験法です。前処理時間の短縮により迅速な検査が可能であるため、生鮮野菜などの腐敗が早いものや短納期での結果報告が必要な場合に適しています。
今回は弊社で採用しているこれらの試験法の特徴や違いについてご紹介します。
通知試験法
(食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法)
通知試験法は農産物や畜産物、測定機器(GC/MS(ガスクロマトグラフィー質量分析計)を用いる方法とLC/MS(液体クロマトグラフィー質量分析計))により試験法が分かれており、代表的なものを下記に示しました。
・GC/MSによる農薬等の一斉試験法(農産物)
・LC/MSによる農薬等の一斉試験法Ⅰ(農産物)
・LC/MSによる農薬等の一斉試験法Ⅱ(農産物)
他7法
今回は農産物についてのGC/MS一斉試験法をご紹介します。
以下に試験法フローを記載します。
写真の固相カートリッジはC18カラム(左)とGC/NH2カラム(右)です。C18カラムは食品由来の妨害成分(夾雑成分と呼びます)を除去し、GC/NH2カラムは色素や脂肪酸、親水性の成分を除去する役割があります。通知法で使用する固相カートリッジはSTQ法で使用するものよりも大きいため、夾雑物が多い検体の処理に適しています。
【通知試験法で行うを適用している検査項目】
・一斉分析260項目
・一斉分析329項目
・一斉分析119項目 等
STQ法
残留農薬迅速一斉分析法(Solid Phase Extraction Technique with QuEChERS method)
STQ法(Solid Phase Extraction Technique with QuEChERS method)とは、欧州や米国で広く採用されているQuEChERS法(Quick(迅速)、Easy(簡単)、Cheap(安価)、Effective(効果的)、Rugged(堅牢性)、Safe(安全))を更に改良し、固相抽出を加えたを用いた抽出精製操作を行う試験法のことです。濃縮操作ゼロ、精製に使用する溶媒量が少なく済む等の理由から、前処理操作の時間短縮が可能となります。
以下に試験法フローを記載します。
QuEChERS法のメリットは、抽出時に塩析、脱水を同時に行うことや、酸性、中性、塩基性農薬を同時に抽出できることが挙げられます。また、抽出操作が簡易的であることや遠心分離機を用いることから、一度に多数検体を処理できることも特徴です。
写真の固相ミニカートリッジはC18-50カラム(左)とPSA-30カラム(右)です。C18カラムは前述の通り夾雑成分を除去し、PSAカラムは色素や脂肪酸等を除去する役割があります。
【STQ法を適用している検査項目】
・一斉分析318項目(GC/MS/MS法)
・一斉分析149項目(LC/MS/MS法)
・一斉分析171項目(LC/MS/MS法) 等
残留農薬検査に用いる分析機器について
弊社では、農薬検査でについて主にGC/MS/MSやLC/MS/MSを使用しています。これらはGC/MSやLC/MSに比べて選択性が高い事から2つの強みがあります。
1つ目は相対感度が高くなり、成分として1ppb単位の微量分析ができることから試料を濃縮せずに装置に導入することが出来るため前処理工程を短縮する事が出来ます。
1つ目は相対感度が高くなり、成分として1ppb単位の微量分析ができることから試料を濃縮せずに装置に導入することが出来るため前処理工程を短縮する事が出来ます。
2つ目は夾雑成分を検出しづらくなるために、偽陽性が少なくなり解析時間を短縮する事が出来ます。
高性能な装置を使用する事により、高い精度で迅速な分析を実現しています。
STQ法に用いる自動前処理装置について
弊社ではSTQ法の特徴である迅速で精度の高い分析法の特徴を更に活かすため、STQ法専用の自動前処理装置を導入しております。
これにより、さらなる前処理時間の短縮が可能となっております。
まとめ
一斉分析は検体の種類や検査項目によって適切な分析方法を選択する必要があるため非常に難しい検査ですが、これまでの経験を活かし、更に最新の機器を用いてお客様のご要望に合わせた高品質な検査を実施しております。
食品中における農薬等の有害物質についてお困り毎がありましたらまずはお気軽にご相談ください。
参考資料
株式会社アイスティサイエンス
http://www.aisti.co.jp/common/pdf/sl22601p.pdf
厚生労働省 食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/zanryu/zanryu3/siken.html
一般財団法人 九州環境管理協会 「LC/MS/MSによる食品分析」
https://keea.or.jp/pdf/knakyokanri/37/vol_37_05.pdf