枝豆と農薬取締法|6月の旬食材シリーズ②
暑さも増し、水分と同時に塩分補給が大切な季節となりました。こんな季節には、塩ゆでした枝豆に塩をふって、サヤごとパクっと口に入れてから豆を食べるのがおいしい枝豆の食べ方ですよね。
大豆の原料でもある枝豆の国内の生産量は65,200トンで、㈱食環境衛生研究所がある群馬県は、北海道に続き国内生産量2位(7,140トン)なんです!!(令和4年)1) 群馬でもたくさん作られている枝豆ですが、おいしくパクっと安全に食べるために欠かせないのが、『農薬』です。無農薬で枝豆をつくると、悲惨なぐらい虫だらけの枝豆ができます。恐ろしくて、口になんて入れられないです(実体験済)。
農薬のイメージは良くないと思いますが、農薬は市場価値の高い野菜を生産するために必要不可欠です。少しでも安心できるよう、農薬が使用できるまでのしくみを紹介したいと思います。
農薬取締法:農林水産省2)
「農薬について登録の制度を設け、販売及び使用の規制等を行うことにより、農薬の安全性その他の品質及びその安全かつ適正な使用の確保を図り、もって農業生産の安定と国民の健康の保護に資するとともに、国民の生活環境の保全に寄与することを目的とする(第一章第一条)。」と規定され、農薬の製造・販売・使用の全般を規制する法律です。
農薬を使用するときには、まず農薬の登録、確認が必要です。登録されていない農薬は、販売も使用もできず、違反した場合は罰則もあります。
①農薬登録申請3)
農薬の製造者・輸入者は農林水産省へ登録申請します。申請には、下記のようにたくさんの試験成績書が必要です。
1 農薬及び農薬原体の組成に関する試験成績
2 安定性、分解性その他の物理的化学的性状に関する試験成績
3 適用病害虫又は適用農作物等に対する薬効に関する試験成績
4 農作物等に対する薬害に関する試験成績
5 人に対する影響に関する試験成績
6 植物の体内での代謝及び農作物等への残留に関する試験成績
7 食肉、鶏卵その他の畜産物を生産する家畜の体内での代謝及び畜産物への残留に関する試験成績
8 環境中における動態及び土壌への残留に関する試験成績
9 生活環境動植物及び家畜に対する影響に関する試験成績
10 試験に用いられた試料の分析法に関する試験成績
11 公表文献等に関する資料
12 農薬の見本検査に関する資料
②登録基準:環境省4)
環境大臣が定める下記項目の農薬登録基準値に適合しなければ、農薬登録はできません。
(1) 作物残留 (2) 土壌残留 (3) 生活環境動植物の被害防止 (4) 水質汚濁に関する基準
③リスク評価:食品安全委員会
人がある物質を一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量(mg/kg体重/日)のことです。
人がある物質を短時間(24時間以内)に摂取しても、健康への悪影響がないと推定される摂取量(mg/kg体重)のことです。
④残留基準:厚生労働省5)
長期摂取の影響を判断するためには、各食品からの農薬の摂取量を合計して、その値が、日本人の1日許容摂取量の80%を超えないことを確認します。
⑤農薬使用基準:農林水産省
申請者から提出されたデータとそのデータ作成時の試験方法も含めて、下記内容について審査を行います。
審査の結果、効果や安全性(環境省、厚生労働省、安全衛生委員の内容も含む)が確認された後に、使用する作物ごとに農薬使用基準を設定します。
農薬登録には、農林水産省、厚生労働省、環境省、食品安全委員会とたくさんの国の機関が関わり、リスク管理とリスク評価を実施しています。
残留農薬基準を遵守するために
残留農薬検査の目的
農薬の残留基準値は、農薬を使用基準に従って適正に使ったかどうかを確かめるための指標とされ、食品中の農薬濃度が基準値以下の食品は、安全であることが保障されるとされています。5)そのため、残留農薬検査を実施することは、食の安全と人の健康や環境保全にとっても重要です。
残留検査方法
成分検査では、可食部での検査が一般的ですが、農薬検査は少し異なります。枝豆のようにサヤまで口に含むものや、手で触れて口に入る可能性のある食べ物は、そのすべてが検査の対象となります。枝豆の他に、バナナやみかんは皮ごと残留検査を実施します。可食部のみより外皮の方が表面に塗布された農薬が多いため、検出頻度や残留量は高くなります。それでも基準値をクリアしないと、市場に流通することはできません。また、日本でも世界標準(Codex)6)に合わせた検査部位を採用する傾向があり、2018年から検査部位の変更が生じています (下図)。7)
以上のように、農薬は「農薬取締法」のもと、厳しい審査を通り登録され、販売されてからも適正に使用されているか否かを判定するために、残留農薬検査を実施しています。さらに2018年の農薬取締法改正により、農薬の再評価制度が導入されました。この制度は、有効成分ごとに、最新の科学的根拠をもとにして安全性等を定期的に再評価するものです。8)このように、安全な食品が流通するように、検査方法や施策も改善されています。
これで安心して、旬の枝豆をサヤごと口いっぱいに頬張って、栄養と塩分を補給し、冷えたビールで英気を養い、これからくる酷暑も乗り越えていけるのではないでしょうか?それでも心配な方は、ぜひ弊社の残留農薬検査をご利用ください☆
残留農薬検査はこちら → 『残留農薬検査』
お問い合わせはこちら → 『お問い合わせ』
1) https://japancrops.com/crops/green-soybean/
2) h農薬取締法について:農林水産省 (maff.go.jp)
3) 農薬登録申請 – 独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)
4) 農薬対策関係 | 水・土壌・地盤・海洋環境の保全 | 環境省 (env.go.jp)
5) index-20.pdf (maff.go.jp)
6) 日本と諸外国の食品表示|コーデックス規格から見る栄養成分分析項目の違い – 食品・検便・アスベスト分析・受託試験の食環境衛生研究所 (shokukanken.com)
7) https://bunseki.jsac.jp/wp-content/uploads/2020/11/p404.pdf
8)日本農薬学会誌 2024 Vol.49 No.1