糖質オフ・糖質ゼロ・糖類ゼロの違いや表示ルールを解説

食品の栄養成分表示ラベルを見てみると、「糖質0g」「脂質0g」といった「ゼロ」表示や、「糖質オフ」などの表示を目にすることがあるかと思います。
健康志向が高まる中、これらの表示は私たち消費者が商品を選ぶ際の重要な手がかりとなっています。
実はこの0(ゼロ)、必ずしも「全く含まれていない」という意味ではないということをご存じでしょうか?
こちらのコラムでは、食品表示基準に基づく「ゼロ表示」の厳密なルール、「糖質」「糖類」の違いや「糖質ゼロ」「糖類ゼロ」「糖質オフ」などの表示に定められた具体的な基準値、混同しやすい表示についてなど、詳しく解説します。
 

「ゼロ表示」のルール:食品表示基準に基づく基本

食品表示基準別表第9によると、「0と表示できる基準」が以下の項目で定められています。
0と表示できる基準(食品表示基準別表第9より抜粋)
 

該当栄養成分0と表示できる量
たんぱく質0.5g
脂質0.5g
飽和脂肪酸0.1g
コレステロール5mg
炭水化物0.5g
糖質0.5g
糖類
(単糖類または二糖類であって、糖アルコールでないものに限る)
0.5g
ナトリウム5mg
熱量5kcal

 
 

糖質、糖類、炭水化物の違い

糖に関する表示のルールを理解する上で、混同しやすいのが、糖質、糖類、炭水化物、これら3つの栄養素の正確な定義と相互の関係性です。

炭水化物とは

炭水化物は、ヒトの消化酵素で分解され体内でエネルギー源となる「糖質」と、「食物繊維」の総称です。
米、パン、麺類などの主食に多く含まれる主要なエネルギー源です。
 

炭水化物=糖質+食物繊維

 

糖質とは

炭水化物から食物繊維を除いたもので、体内でエネルギー源となる物質全般を指します。
具体的には、ブドウ糖やデンプン、オリゴ糖、さらには糖アルコール(キシリトール、エリスリトールなど)も糖質に含まれます。
低糖質ダイエットなどで制限の対象とされるのは、この「糖質」です。
 

糖類とは

糖類は、糖質の一部であり、そのなかでも「単糖類」(果物やはちみつなどに含まれるブドウ糖、果糖など)と、「二糖類」(ショ糖、乳糖、麦芽糖など)に限定されます。

 
糖質、糖類、炭水化物の関係性は以下のようになっています。
糖質、糖類、炭水化物の関係
 
 

「糖質ゼロ」と「糖類ゼロ」は同じではない!

糖質と糖類の定義が異なることから、「糖質ゼロ」と「糖類ゼロ」も同じ意味ではありません。
 
糖質ゼロと糖類ゼロ
 

「糖質ゼロ」に関する定義と基準値

「糖質ゼロ」は、糖質全体の量が以下の基準を満たしていることを示す強調表示です。
 

定義

食品中の糖質の総量(糖質である多糖類と糖アルコールおよび糖類のすべて)が、以下の基準値を下回っている場合に表示できます。
 

基準値

表示名飲料以外の食品(100gあたり)飲料(100mLあたり)
糖質ゼロ0.5g未満0.5g未満

 

「糖類ゼロ」に関する定義と基準値

「糖類ゼロ」は、糖類(単糖類および二糖類)の量が以下の基準を満たしていることを示す強調表示です。
 

定義

食品中の単糖類(ブドウ糖、果糖など)と二糖類(ショ糖、乳糖など)の合計量が、以下の基準値を下回っている場合に表示できます。
 

基準値

表示名飲料以外の食品(100gあたり)飲料(100mLあたり)
糖類ゼロ0.5g未満0.5g未満

「無糖」「ノンシュガー」といった表示は、この「糖類ゼロ」の基準値を満たす必要があります。
 
 
したがって、「糖類ゼロ」と表示されていても、カロリーや血糖値への影響がある糖質(例:デンプンや糖アルコール)が大量に含まれている可能性があります。
一方、「糖質ゼロ」と表示されていれば、糖質の総量が基準値以下であるため、必然的に糖類も基準値以下になります。
 
 

規制対象外の表示:混同しやすい「ゼロ」や「控えめ」の表現

栄養成分の「ゼロ」表示については、食品表示基準の厳格なルールが適用されますが、似たような表現でも、本基準の対象外となるものがあります。
 

例「砂糖不使用」

この表示は、製造工程で意図的に砂糖を添加していないことのみを示すものです。
砂糖以外の糖質(ブドウ糖、果糖、デンプン、人工甘味料など)の量について、法的に制限されるものではありません。
また、原材料として使用した果物や野菜などに天然由来の砂糖が含まれていても、使用ではないため、この表示をすることが可能です。
 

例「甘さ控えめ」

この表示は、あくまで商品の味覚や感覚を表すものであり、特定の栄養成分量を示すものではないため、規制の対象にはなりません。 ただし、栄養成分量を強調する「糖類控えめ」や「低糖類」といった表現は、「糖類オフ」と同様に、基準値が定められています。

 

例「無農薬」「天然」

栄養成分の強調ではない、「無農薬」や「天然」といった、用語の慣習的な使用と見なされる表示は規制の対象にはなりません。

 
 

「オフ」・「低」・「控えめ」表示に関する基準値

次に「ゼロ」ほど厳しくはないものの、成分が少ないことを強調する「オフ」・「低」・「控えめ」表示の基準についてみていきましょう。
 

 

「糖質オフ」・「低糖質」・「糖質控えめ」の表示に関する基準値

「糖質オフ」や「低糖質」、「糖質控えめ」と表示するための基準値は、食品表示基準で明確に定められていません。
比較対象となる標準的な食品(類似品など)と比べて糖質が低く、科学的根拠に基づけば、販売者の責任において表示をおこなうことができます。

飲料以外の食品基準値なし
飲料基準値なし

 

「糖類オフ」・「低糖類」・「糖類控えめ」の表示に関する基準値

「糖類オフ」や「低糖類」、「糖類控えめ」と表示する場合は、以下の基準を満たし、かつ、比較対象となる標準的な食品(類似品など)よりも25%以上低減されている必要があります。

飲料以外の食品100gあたり 5g以下
飲料100mlあたり 2.5g以下

 
 

基準値まとめ

表示名基準値(飲料以外の食品100gあたり)基準値(飲料100mlあたり)
糖質ゼロ(無糖質)0.5g未満0.5g未満
糖質オフ(低糖質・糖質控えめ)基準値なし基準値なし
糖類ゼロ(無糖)0.5g未満0.5g未満
糖類オフ(低糖類・糖類控えめ)5g以下2.5g以下

 
※「糖類オフ」などの表示をおこなう場合は、上記の基準値を満たすことに加え、比較対象となる標準的な食品(類似品など)よりも25%以上低減されていることが必要です。
 
 

混同しやすい表示の整理

糖質と糖類の表示以外にも、消費者が混同しやすい表示について、基準を確認しておきましょう。

「カロリーゼロ」と「カロリーオフ」の基準

表示名基準値(飲料以外の食品100gあたり)基準値(飲料100mlあたり)
カロリーゼロ5kcal未満5kcal未満
カロリーオフ40kcal以下20kcal以下

 

「無糖」と「糖質ゼロ」の違い

無糖、糖質ゼロ
 
特に注意が必要なのが「無糖」という表示です。
無糖」は、食品表示基準上、「糖類ゼロ」(100gまたは100mlあたり 0.5g未満)の基準を満たしていることを意味します。
したがって、「無糖」がゼロにしているのは「糖類」のみであり、糖質全体ではありません。
一方で、「糖質ゼロ」は、糖類を含むすべての糖質が「糖質ゼロ」(100gまたは100mlあたり 0.5g未満)の基準を満たしていることを意味します。
そのため、ダイエットなどで糖質を抑えたい場合は、「無糖」ではなく、「糖質ゼロ」の表示を確認する必要があります。
 

まとめ

「ゼロ」や「オフ」といった表示は、厳密なルールにもとづいて、その使用が決められています。
「ゼロ」表示であっても、100gまたは100mLあたり0.5g未満の成分が含まれている可能性があります。
また、「糖類オフ」表示については基準値が定められていますが、「糖質オフ」表示については基準値は定められていません。
最も大切なのは、パッケージに書かれた表示(ゼロ、オフ)だけでなく、栄養成分表示を常に確認することです。
特に「糖質」の摂取量を管理したい方は、以下の点に注目しましょう。
「糖類ゼロ」「無糖」の場合は、「糖質」が含まれている可能性は十分にあります。
「糖質ゼロ」の表示があれば、「糖類」も含まれていないことになります。
正しい表示ルールを知り、パッケージの裏側までチェックすることで、健康的な商品選びをより賢くおこなえるようになります。

 

栄養成分分析は食環境衛生研究所へ

食環境衛生研究所では、公定法および近赤外線分光法 (簡易法) での栄養成分分析を行っております。
受託分析をご希望のお客様、分析方法で迷われるお客様はお気軽にご相談ください。

 
栄養成分分析・検査 (食品表示法対応)
 

関連コラム

▶栄養機能食品とは|機能性表示食品や特定保健用食品との違いは?
▶機能性表示食品とは?|トクホとの違いや効果について解説

youtube