【CAV】鶏貧血ウイルスの影響と対策方法

鶏貧血ウイルス感染症は鶏貧血ウイルス(以下CAV)によって引き起こされる鶏の感染症で、貧血や発育不良などの症状を引き起こします。
 
原因であるCAVは1979年日本で初めて分離された、エンベロープを持たない小型(径約25nm )の環状一本鎖DNAウイルスです。アネロウイルス科ジャイロウイルス属の唯一の種として分類され、血清学的にも単一です。熱や薬剤に対する抵抗性が強く、飼育環境中のウイルスを撲滅する事は困難となります。CAVは鶏以外の鳥類から分離された報告はなく、鶏を唯一の宿主としていると考えられています。
 

【症状】

雛は感染後2~3週をピークとする汎血球減少症、リンパ系組織の萎縮、皮下組織や筋肉の出血などの症状を示します。孵化後1~4週齢に発生し、多くは2週齢までに死亡。2週齢以上の鶏に感染しても多くは不顕性となります。
CAVの標的細胞は骨髄の造血幹細胞と胸腺のT細胞です。造血幹細胞は分化し、赤血球や血小板になる細胞でありますが、CAVに感染すると血球に分化することができず貧血を引き起こします。またT細胞に感染することで免疫抑制が引き起こされます。
 

 
造血幹細胞の生産、胸腺でのT細胞の分化・成熟は幼雛期に盛んなため、CAVの感染により症状が発現するのも幼雛期となります。日齢が進むにつれてCAVが感染できる細胞が減少すると発症しなくなり、2週齢を過ぎると貧血を起こさなくなり、耐過鶏は回復します。
 

【伝播】

介卵感染(垂直感染)および水平感染によって伝播しますが発症は介卵感染の場合にみられます(孵化後早期に水平感染した雛では発症します)。種鶏の場合、産卵開始前後に感染しやすいと言われており、この時期に感染すると垂直伝播し、雛がウイルスを持って孵化し被害となります。
CAVは抗体の有無に関わらず、生殖腺、脾臓など一部の組織で長期間潜伏感染することも明らかにされており、SPF・コマーシャルに関わらず、種鶏群では抗体存在下でもCAVは長期間存続し次世代へ伝達されている可能性があります。またIBDなど免疫不全を起こすウイルスとの混合感染で症状は悪化します。
 

【対策】

適切なワクチンの使用と農場の衛生管理が主な対策となります。
熱や薬剤に対する抵抗性が非常に強いウイルスなので根絶は不可能ですが、農場の洗浄・消毒はウイルス量を低減させるためには効果的な手段の1つとなります。
またCAVはワクチン未接種の、抗体を持たない種鶏群由来雛での発生が多くみられます。産卵開始前にワクチン接種を実施し、種鶏に抗体を付与することで雛に移行抗体を保有させ感染から守ります。
 
CAV の感染は、単独感染による直接的被害はそれほど大きくはありませんが、生産性の低下、他の病原体との混合感染または免疫抑制によって、病勢の悪化を引き起こす可能性があります。
ワクチンの適切な使用に加えて、鶏群の衛生管理は非常に重要となります。
 

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