【輸入食品・カビ】チョコレートから食の安全を考える①

チョコレートの原料であるカカオ豆。近年、日本でもカカオの苗を育て収穫できるようになってきましたが、まだ輸入に頼ることがほとんどです。Bean to Barチョコレートが注目を集め、産地やカカオ豆の種類などにこだわったチョコレートが増え、たくさんのカカオ豆が輸入されています。カカオ豆に限らず、日本に輸入される食品はたくさんあります。これら輸入食品はどのように安全対策をされているかを、カカオ豆を交えて紹介したいと思います。
 

【輸入食品の安全対策に関わる決まり】

①輸入者は厚生労働大臣へ届け出を提出

・輸入者の氏名、住所
・食品等の品名、数量、重量、包装の種類、用途
・使用されている添加物の品名
・加工食品の原材料、製造又は加工方法
・遺伝子組換え又は分別流通生産管理の有無
・添加物製剤の成分
・器具、容器包装又はおもちゃの材質
・貨物の事故の有無
などなど、カカオ豆の輸入には細かい内容の届け出が必要です。
 

②農林水産省の「植物防疫法」と「家畜伝染病予防法」

カカオ豆などの木の実や野菜、果物などを輸入する際は「植物防疫法」が、動物や畜産物を輸入する際は「家畜伝染病予防法」があり、国内の農作物や植物、家畜をはじめとした動物を伝染性疾病や害虫から守っています。
 

③厚生労働省の「食品衛生法」

食品の安全性確保と飲食での衛生上の危害発生を防止するため、販売する食品や添加物の採取・製造・加工・使用・調理・貯蔵・運搬・陳列・授受について、「清潔かつ衛生的に行われなければならない」という基本原則を規定しています。また、食器、容器、包装、乳児用おもちゃについても規制の対象としています。
 

④財務省の「関税法」

カカオ豆を輸入する時は、農林水産省の「植物防疫法」に合格しなければ、税関を通過できないことになっています。食肉の場合も、「家畜伝染病予防法」に合格しなければ、通関できない仕組みになっています。関税法により「関係法令がある場合、その法令への合格を税関に証明し、その確認を受けなければならない」という決まりがあるためです。
上記のように、カカオ豆を輸入する時には輸入者を明確にしたうえで、国の3つの省庁(農林水産省、厚生労働省、財務省)が確認し、食品の安全確保に努めています。
 
 

【輸入食品の継続的安全性の確保】

カカオ豆のような輸入食品は、上記に記載した通り安全を確認して国内に入ってきます。輸入されるカカオ豆が常に安全であることを確認するためには、継続的な監視・検査が必要です。検査は厚生労働省の施設機関である検疫所や登録検査機関をはじめとする様々な分析機関で行われています。

検疫所 1)

検疫所は全国に105カ所設置されています。残留物質(農薬、動物用医薬品等)、遺伝子組換え食品や有毒有害物質(カビ毒や重金属)の検査は、高度な分析機器や特殊な機器を要するため横浜及び神戸の両センターが分担して実施しています。
 
全国の食品等輸入届出窓口
 

検査の種類 2)

  • 検査命令(輸入者が自費で実施)
  • 食品衛生法違反となる可能性の高い食品などに対し、輸入するたびに登録検査機関で検査を実施することを厚生労働大臣が命じる検査です。
     

  • 行政検査
  • 初回輸入時の食品等の検査、食品衛生法に違反している食品等の確認検査、輸送途中に事故が発生した食品等の確認検査を検疫所の食品衛生監視員が実施する検査です。
     

  • モニタリング検査
  • 多種多様な輸入食品等について、食品衛生上の状況について幅広く監視(モニタリング)し、必要に応じて輸入時検査を強化する等の対策を講じることを目的として、国が年間計画に基づいて実施する検査です。
     

  • 指導検査(輸入者が自費で実施)
  • 農薬や添加物等の使用状況や同種の食品等の違反情報等を参考として、輸入者の自主的な衛生管理の一環として、検疫所から輸入者に対して定期的(初回輸入時を含む。)な検査の実施を指導する検査をいいます。
     
    モニタリング検査のみ、検査結果を待たずに輸入手続きを進めることができますが、他の検査では、結果が適合と判断されるまで輸入手続きを進めることはできません。
    カカオ豆は2006年に残留基準を超えた殺虫剤が検出され、近年ではカカオ製品においてカビ毒であるアフラトキシンが検出されたため、検査命令が出されています。
     

    食品の安全について

    カカオ豆やチョコレートなど輸入食品の安全は、輸入者と国の協力のもとで保たれていることがわかります。しかし、食品の生産、加工、流通・輸入、販売までがどんなに管理されていても、食品を購入してからは、私たち消費者が管理する必要と責任があります。食品は管理方法を誤ると腐敗が進み、菌や毒素の産生により人を死に追いやる場合もあります。消費者自身も食品の安全について考え、知識を身につけておくことが大切です。
     
     
    >>残留農薬検査はこちら
    >>カビ毒検査はこちら
     
    参考HP
    1)「横浜検疫所ホームページ
    2)「大阪検疫所 食品監視課
     
     

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