【カドミウム・鉛】チョコレートから食の安全を考える②

チョコレートは嗜好性の高い食品として知られています。特に高カカオチョコレートには、ポリフェノールが豊富に含まれており、美容や健康に効果があると謳われています。弊社でもカカオポリフェノールの定量分析を行っています。
そんな健康に良いとされる高カカオチョコレートですが、健康に大きな危害をもたらす重金属の「カドミウムや鉛」が含まれていることをご存じですか?
 

重金属の健康被害

カドミウム1)

長期間の暴露により腎臓、肺、肝臓 に障害を生じることが報告されています。特にカルシウム代謝を阻害し、栄養上の欠落等の要因と複合して骨粗鬆症、骨軟化症を発症させる可能性が指摘されています。
 

2)

脳と肝臓に多く蓄積し、神経系の問題、高血圧、免疫系の抑制、腎臓の損傷、生殖の問題につながる可能性があります。鉛中毒では体内の酵素に含まれるチオール基(-SH)と強く結合し、血液を作りにくくさせ、貧血を引き起こすことが知られています。
 

カドミウムや鉛が含まれる理由3)

カドミウムは、自然界では鉱物、水中、土壌に存在します。カドミウム含有量が多い土地でカカオの木を育てると、カカオの根からカドミウムを吸収し、成長と共にカカオ豆に蓄積されます。
一方、鉛はカドミウムとは異なり、カカオの成長過程で吸収されるのではなく、製造工程から外殻に含まれることが分かっています。豆が摘み取られ、さやから取り出された直後の鉛含有量は低いですが、豆が数日間天日干しされると増加します。天日干しの間、土壌に含まれる鉛が土や砂ほこりとなり、汚れが豆に付着した際に蓄積していると考えられています。
そのため、カドミウムと鉛では対策方法が異なります。鉛の除去はできる限り土壌や空気中の汚染物質に触れないような環境下で乾燥をすることで可能となります。一方、カドミウムを除くことは難しいですが、下記のような対策が行われようとしています。
 
① カドミウムを吸収しにくいカカオ品種を探す。
② 遺伝子操作によりカドミウムが蓄積しないよう改良を行う。
③ カカオの木が古くなるにつれてカドミウム含量が増加する傾向があるため、古いカカオの木を若いカカオの木に置き換える。
④ カドミウムで汚染されている土壌を除去または浄化処理する方法を検討。
 

基準値について

カドミウム:コーデックス委員会が策定した国際基準値4)

 

食品基準値(mg/kg)基準値が適用になる食品の部位備考
乾燥総カカオ固形分を30%以上50%未満含む又は含むことを謳うチョコレート0.7卸売又は小売流通する食品全体スイートチョコレート、ジャンドューヤチョコレート、セミビターテーブルチョコレート、バーミセリチョコレート/チョコレートフレーク及びビターテーブルチョコレートを含む
乾燥総カカオ固形分を50%以上70%未満含む又は含むことを謳うチョコレート0.8卸売又は小売流通する食品全体スイートチョコレート、ジャンドューヤチョコレート、セミビターテーブルチョコレート、バーミセリチョコレート/チョコレートフレーク及びビターテーブルチョコレートを含む
乾燥総カカオ固形分を70%以上含む又は含むことを謳うチョコレート0.9卸売又は小売流通する食品全体スイートチョコレート、ジャンドューヤチョコレート、セミビターテーブルチョコレート、バーミセリチョコレート/チョコレートフレーク及びビターテーブルチョコレートを含む
そのまま消費できるココアパウダー(乾燥総カカオ固形分が100%のもの)2卸売又は小売流通する食品全体この基準値は100%ココアパウダーに適用される。この基準値はココアパウダーが他の食品の原料として使用される場合にも適用される。この基準値はココアパウダーを主成分として粉乳や砂糖といった他の成分を含む飲料には適用されない。

 

鉛 : 鉛の曝露管理に関するガイドライン(WHO)5)

WHOは2021年に、鉛曝露の状況を詳細に検討し、血中鉛濃度5マイクログラム/デシリットル (μg / dL) で、鉛の曝露による治療の必要性、曝露の軽減や防止策をするための判断基準と定めました。しかし、鉛の血中濃度が 5 μg / dLと低くても、幼児の神経学的および認知的な発達障害と関連していることは明らかであり、より注意が必要だと警鐘を鳴らしています。
 

チョコレートの選び方3)

数社のチョコレートに含まれるカドミウムおよび鉛の含有量が、Consumer Reportsに掲載されています。チョコレートを選ぶ時の参考にしてみるのも良いと思います。また、チョコレートの選び方についてのアドバイスも掲載されています。その中のいくつかを紹介します。
 
① 高カカオチョコレートはポリフェノールが豊富で機能性に富んだ食品ですが、別の食材にも同様の成分や効果のある栄養が含まれているため、摂取方法を検討してください。
② カドミウムや鉛を避けたいなら、カカオ含有量は低いものを選んでください。(カカオ80%よりカカオ70%など)
③ オーガニックチョコレートだから含有量が低いと思わないでください。
④ 食生活の上で、チョコレートはおやつとして取り入れ、バランスの良い食事を心がけましょう。
 
昨今のカカオショックも加わり、価値の高まりつつあるチョコレート。さらに安全で安心して食べることができるチョコレートを選ぶことは、賢い消費者であることを試されているようにすら感じます。チョコレート好きの方、カカオ豆の輸入やチョコレート製造に関わる方は、より安心して食べられるよう、弊社の重金属検査をぜひご利用ください☆
 
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参考資料・HP
>>1) カドミウムに関する物質情報_環境省
>>2) 岡山医学会雑誌
>>3) Lead and Cadmium Could Be in Your Dark Chocolate
>>4) 食品中のカドミウムに関する基準値_農林水産省
>>5) 鉛基準_日本WHO協会
 
 

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