鶏アデノウイルスについて|封入体肝炎、筋胃びらん、心膜水腫症候群

鶏アデノウイルス(FAdV)は古くから知られている鶏の疾病で、世界的に広く分布し、鶏に対する病原性が低い常在ウイルスとして知られていますが、条件が合致するといろいろな症状を示します。また、鶏貧血ウイルス(CAV)や伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)の混合感染に起因する免疫抑制や増強作用が示唆されています。
 

病型(症状)と血清型

FAdVは大きく分けて3種類の病型が知られています。血清型は1~11(8a及び8bを含む)の12種類に区別され、最近では遺伝子解析による血清型の判別も検討されています。
 

封入体肝炎(IBH)肝臓の退色、腫脹、大小の出血斑が特徴。
2010年前後に鶏アデノウイルスによる封入体肝炎の報告が多発。発症したのは2週齢前後の若齢鶏で、血清型はほとんどが2型。世界では主に2、3、6、7、8a、8b、9、11型等、多様な血清型が分離される。
アデノウイルス性筋胃びらん(AGE)筋胃でのびらん、他の疾病でも発生するため類症鑑別が必要。
血清型1、8が多い。
心膜水腫症候群(HPS)心膜腔内に心膜水の重度の貯留が特徴。
血清型4による発生が知られている。

 

感染経路

  • 介卵感染…種鶏から雛へ、ウイルス抗原は卵黄から効率に検出されます。
  • 水平感染…鶏群内での感染拡大、主に糞便を介した経口感染によります。
  • 野鳥からの感染…鶏以外の家禽や野鳥からもウイルスが分離されるため注意が必要です。
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    検査意義(PCR、抗体検査、病理組織検査)

    (株)食環境衛生研究所では、以下の検査を実施しております。

  • PCR
  • 病変部位からのPCRによりウイルス遺伝子を検出できます。
     

  • 抗体検査
  • 本ウイルスは多くの農場で存在することが知られているため、農場の汚染状況や日齢ごとの抗体の推移の確認に有効です。
     

  • 病理組織検査
  • IBH…肉眼所見から特徴的な肝臓病変を確認できるので、比較的診断は容易です。
     

    肉眼所見

    封入体肝炎による肝臓の退色及び出血((株)食環境衛生研究所)
     
    封入体肝炎による肝臓の退色及び出血
     
    封入体肝炎という文字のごとく、肝細胞内に好塩基性核内封入体が観察されます。
    AGE…筋胃において核内封入体を伴った腺上皮細胞が観察されます。
    HPS…心膜水腫は、ウイルスの直接作用ではなく、急性の肝臓機能障害により心臓に二次的に循環障害がおこる結果と推測されており、心外膜下に水腫のほかに肝臓においても肝細胞に核内封入体が認められます。
     
    日本には鶏アデノウイルスのワクチンが販売されていないため、鶏舎の消毒は非常に重要な対策の一つです。エンベローブのないウイルスであるため、適切な消毒薬と消毒方法を守ることが必要です。
     
     

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