イノシシ:豚におけるオーエスキー病制御への懸念増加
イノシシ:豚におけるオーエスキー病制御への懸念増加
1.序論
オーエスキー病は豚、イノシシを自然宿主とする経済的に重要な感染症の1つである。この病気は豚ヘルペスウイルスⅠ型が原因となり、ブタやイノシシ以外の哺乳動物では感染してからウイルスを排泄する前に死亡することからほかの動物への感染源にならないと考えられている。 オーエスキー病は世界の多くの国で豚における制御努力がなされている。 ヨーロッパでは、ほとんどの国が弱毒糖タンパクE欠損ワクチンの予防接種をすることで撲滅計画を実施している。また、オーエスキー病清浄国ではワクチン接種を禁じている。
豚ではオーエスキー病の清浄化が成功しているが、イノシシでは継続的な発生が報告されている。そこで、本研究は異なる飼育管理下にあり、豚との接触の可能性があるヨーロッパイノシシのオーエスキー病の抗体陽性率を経時的に評価することが目的である。
2.材料・方法
イベリア半島の6つの地域において2000~2010年の期間の間に1659頭のイノシシ血清を採材し、抗体の有無をELISA法によって検査した。イノシシの検体を次のように群分けした。
①2000-2003
②2004-2007
③2008-2010
オーエスキー病抗体陽性率を国全体および地域別に各期間で比較した。
3.結果
研究期間10年間におけるイノシシの平均オーエスキー病抗体陽性率は49.6±2.4%であった。イノシシを飼育している地域において最も高い抗体陽性率を示した。国全体から見て、豚での抗体陽性率は2003年の70%から2010年には1.7%に減少したにもかかわらずイノシシにおいては高い水準を維持したままであった。
4.考察
本研究結果からオーエスキー病抗体陽性率は、イノシシおいて依然高い水準にあったことを示した。この事実からオーエスキー病清浄化の段階にある豚や他の野生動物にとって、イノシシからのオーエスキー病感染リスク増加が懸念される。
5.一言
豚においては清浄化の段階にあるオーエスキー病であるが、生物学的に類似するイノシシが依然高い抗体陽性率を示していることから今後も油断することができない病気であることが考えられる。 今後もイノシシのオーエスキー病の疫学調査を行い、豚のバイオセーフティーを改良するよう取り組むことが重要になるかもしれない。
Boadella M., Gortazar C., Vicente J. and Ruiz-Fons F.
BMC Veterinary Research 2012,8:7