標準寒天培地と「生菌数」について|畜産部門向け

食品衛生の規格で耳にするであろう、生菌数または一般細菌数という指標がありますが、これは検体に存在しているあらゆる細菌をターゲットにしている訳ではありません。世の中には無数の種類の細菌が存在していますが、この検査で現れる細菌は「標準寒天培地において、好気的条件下で、35±1.0℃で48±3時間培養後に発生が認められる」もののみ。偏性嫌気性菌の代表ビフィズス菌やウェルシュ菌、栄養たっぷりの培地が好きなレンサ球菌などはこの検査に乱入してもコロニーとなって検出できないのです。
 
さてこの生菌数という指標。食品においては規格がキッチリ決まっていますが、畜舎の拭き取り検査や家畜の飲水といったものが検体となると規格が存在しませんので、既にある判定基準や規格を代用する場合があります。弊社畜産部門では畜舎環境のスタンプ検査では、Ten Cateの判定、家畜の飲水では上水の規格などを用いて評価をさせて頂いておりますが、汚染度合は採材時の環境により振れ幅が非常に大きくなります。(シャーレを埋め尽くすほどのバチルス属が生えてくることも…。)そのため、一時点で見るよりも定期的に線で見ることをおすすめ致します。また、サルモネラや大腸菌の定性検査と併せて実施することでモニタリングの一環としてお役立て頂けるかと思います。
(参考・食環研コラム:『>>ふき取り検査の方法と評価について』 )
 
また、蛇足にはなりますが、食品衛生検査指針における生菌数の培養法はアメリカ等で採用されているAOAC方式に準拠していると考えられています。一方EUで一般的なISO方式だと30±1℃で72±3時間培養なのでより発育温度帯が低い細菌の検出が可能です。ISOの検査方法は国際的な試験法と位置付けられることが多く、国際化の流れを受けていずれは培養方法が見直される日が来るかもしれません。
家畜や畜舎環境由来の検体では検出される細菌がどのように変化するか、筆者個人としては楽しみで仕方ないフューチャーワークの一つです。
 
 

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