栄養成分表示について⑥~栄養成分表示の歴史~|改めて学ぼう
2020年(令和2年)4月1日から新たな食品表示制度が完全施行となり、栄養成分表示が義務化されました。現在は例外を除き、販売されている容器包装入りの加工食品には栄養成分表示が記載されています。
ところで、何故このような表示が義務づけられたのでしょうか。
今回は栄養成分表示の歴史について少しお話したいと思います。
栄養成分表示が義務づけられるまでの流れ
栄養成分表示は「食品表示法」という法律に基づき、その中の「食品表示基準」に具体的な表示ルールが規定されています。
この食品表示法は「食品衛生法」「JAS法」「健康増進法」の3法でそれぞれ定められていた食品への表示の基準を一元化したものです。
歴史をさかのぼると、栄養成分表示のおおもとは1952年(昭和27年)に規定された「栄養改善法」という法律からきています。
これは1945年(昭和20年)以降、戦後の国民の栄養状態を改善することを目的に、国民栄養調査の実施・自治体による栄養指導・食品の栄養成分の検査・栄養成分の表示などについて規定した法律です。
戦後の国民栄養調査の結果より、たんぱく質やカルシウム、ビタミン等が特に不足していたことが判明し、それらを強化するために特定の栄養成分の補強が勧告されました。そして、その栄養成分が積極的に補給され得る旨の表示(補給できる旨の表示)と特定の対象者の栄養補給に適する旨の表示(特別の用途に適する旨の表示)など、表示の許可基準が定められました。
その後段々と食生活が豊かになるにつれ、栄養の過多摂取による肥満、糖尿病などの成人病の増加を背景として、特定の栄養成分の補給ができる旨の情報だけではなく、熱量・ナトリウム量・脂質の量などの栄養成分が少ない旨の情報へのニーズが高まっていきました。
一方で、当時は食品メーカーによって栄養成分表示方法が異なり、さらに基準がない中で「低カロリー」「塩分ひかえめ」「ビタミン強化」などあいまいな表示が多く、食品を選択する消費者にとってわかりにくい表示が問題視されていました。
そこで、消費者が食品に含まれる熱量などの栄養成分が適切に理解できるよう、わかりやすい表示方法の統一が必要となり、1995年(平成7年)に栄養改善法が改正され、「栄養表示基準制度」が導入されました。
これにより、表示内容や成分の測定法(基本的には日本食品標準成分表で採用されている方法を使用)等、加工食品の栄養素を表示する際の基準が定められました。
猶予期間を経て、1998年(平成10年)には栄養成分表示をする全ての包装食品は改正後の表示方法に従わなければならなくなりました。まだこの時点では栄養成分表示は義務ではなく、表示する場合にこの基準が適用されました。
その後、2003年(平成15年)5月に「健康増進法」が施行され、従来の栄養改善法は廃止となり、栄養表示基準は「健康増進法栄養表示基準」に引き継がれました。
そして、食品衛生法・JAS法・健康増進法の食品表示に関する部分を一元化した「食品表示法」が2015年(平成27年)4月1日に施行され、栄養表示基準も食品表示法に引き継がれ、「食品表示基準」として組み込まれました。
この「食品表示基準」から、栄養成分表示の記載が必須となりました。
理由としては、近年の生活習慣病の増加や健康に対する関心の高まりから、一般の消費者が食品を購入する際の商品選択の機会を確保するためとされています。
ナトリウムの表記も食塩相当量表記に変更され、よりわかりやすい表示の見直しが行われました。そして新しいルールが適用された後、数年の猶予期間を経て今に至ります。
このように、現在の栄養成分表示は長い道のりを経て現在の表記方法となり、表示が義務付けられています。
食品中にどの栄養成分がどのくらい含まれているかが記載されていることで、生活習慣病予防や健康増進の観点から正しい商品選択に役立つことが期待されています。
栄養成分表示は消費者の健康づくりに役立つ重要な情報源として活用されているのです。
弊社では栄養成分表示に関わる分析を行っています。
ご興味がある方はぜひご依頼ください。
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>>栄養成分表示について④~0(ゼロ)だけど0じゃない!?~|改めて学ぼう
>>栄養成分表示について⑤~表示が省略できる条件~|改めて学ぼう
参考文献
>>食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン:消費者庁
>>第4回食品表示一元化検討会:消費者庁
>>大江秀夫:栄養表示基準制度とその経過について, 栄養学雑誌, Vol.55, No.3, 101~110 (1997)
>>横山知子:栄養成分表示制度の変遷と東京都における栄養成分検査, Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. Pub. Health, 73, 25-36, 2022 (2022)