脂肪酸の分析方法とは?|わかりやすく解説!

まえがき

弊社の脂肪酸検査では脂質を構成する脂肪酸を調べる事が出来るため、食品の特性や特徴等を知ることが出来ます。本コラムではその脂肪酸検査がどのように行われているのかをご紹介します。
 

脂肪酸検査について

①検体の粉砕

受領した検体によって、フードプロセッサー、電動ミル、製粉機、ドライアイスによる凍結粉砕等適切な粉砕処理を行い、検体を細かく均一にします。
 
粉砕の様子はこちらをご参考ください
>>アフラトキシン:その②~飼料の分析(飼料の粉砕・抽出)~はこちら

②前処理

弊社の脂肪酸検査は、国際的に認証されているAOAC (Association of Official Analytical Chemists) インターナショナルの公定法であるAOAC996.06に準拠した方法を採用しており、その前処理ステップは図1の通りです。
食品中の脂質の主要成分はグリセロールに3つの脂肪酸が結合したトリアシルグリセロールが大半を占めます。そのため、まず初めに酸による加水分解処理を行い、グリセロールと脂肪酸の結合を切断します。次のステップで、グリセロールから切り離された脂肪酸をエーテルで抽出し、最後のステップで、抽出された脂肪酸をメチル化させ分析用溶液を作成します。
 
脂肪酸検査の前処理ステップ
 

③分析装置による測定

前処理で得られた分析用溶液を、水素炎イオン化検出-ガスクロマトグラフ法 (GC-FID) を使用し分析します。FIDはGCで用いられる汎用性の高い検出器で、ほぼすべての有機化合物を検出でき、一般的に物質の沸点が低いほど早く、沸点が高いほど遅く検出されます。
このGC-FID分析により、約60分で37成分の脂肪酸を一斉に測定でき、検体に含まれている各脂肪酸のピーク面積を知ることが出来ます (図2)。ピーク面積とは、検出されたピークとベースラインで囲まれた箇所の面積のことを指し (図3赤色部分)、検体に含まれている脂肪酸量が多ければ多いほど、このピーク面積は大きくなります。
 
GC-FIDを用いた脂肪酸分析チャートの一例
 
ピーク面積例 (図2の一部を拡大)
 

④分析値の定量

脂肪酸検査では、GC-FIDで検出された脂肪酸を「g/100 g」や「g/100 mL」といった、”検体100 gあたりあるいは100 mLあたりに含まれる量 (g:グラム)”で定量します。したがって、前述のGC-FID分析で検出された検体に含まれる各脂肪酸のピーク面積から、何gの脂肪酸が含まれているかを算出しなければなりません。
定量には検体のピーク面積だけでなく、既知の濃度で調製されている標準溶液が必要不可欠であり、この標準溶液と検体のピーク面積を比較することで検体に含まれる脂肪酸濃度を算出することが出来ます。例えば、10 g/100 gの標準溶液のピーク面積が10,000で、検体のピーク面積が1,000だった場合、検体に含まれている脂肪酸濃度は1 g/100 gであると算出されます。脂肪酸検査では、標準物質の他に、一定量の内部標準物質を加えて定量する内部標準法という手法を用いて、検体に含まれる脂肪酸が何gかを定量しています。
 
定量に関してはこちらもご参考ください
>>定量分析の実際②|機械にかけるだけで分析値が得られる訳じゃない。
 

まとめ

以上、弊社の脂肪酸検査の方法に関して簡単にご紹介しました。おさらいすると、
①検体の粉砕
②前処理
③分析装置による測定
④分析値の定量
このような一連の流れで日々検査を行っています。本コラムを通して、少しでも脂肪酸検査に興味を持っていただけると幸いです。
 

あとがき

弊社では飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、その他栄養表示成分検査も行っております。相談等もお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
 
・脂質、脂肪酸、栄養表示成分検査等はこちら → 『食品表示栄養成分検査
・お問い合わせはこちら → 『お問い合わせ
 

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