脂肪酸の構造の違いについて②
まえがき
脂肪酸は、炭素(C) および酸素 (O)、水素 (H) の3つの原子で構成されており、脂肪酸の種類によって結合する炭素の数や結合の仕方が異なります。前回のコラム「脂肪酸の構造の違いについて①」では、各脂肪酸の構造の違いについて簡単にご紹介しました。
本コラムでは、不飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の表記の違い (n-3/n-6やcis/trans) についてご紹介します。
n表記とcis/trans表記の違い
不飽和脂肪酸は二重結合を1つ以上持ち、「炭素数:二重結合の数」で表されます。例えば、リノレン酸は炭素数18で二重結合を3つもつため、C18:3と表されます。しかし、二重結合の場所の違いによって、α-リノレン酸とγ-リノレン酸が存在するため、それぞれをC18:3 n-3やC18:3 n-6と表記し区別します。つまり、n-○○は二重結合の場所を示す役割を持っています。
また、cis/trans表記の場合も同様に、二重結合の場所を示す役割を持っており、α-リノレン酸はC18:3 cis-9,12,15、γ-リノレン酸はC18:3 cis-6,9,12と表記されます。
では、n表記とcis/trans表記にはどのような違いがあるのでしょうか。
n表記の場合
n-〇〇で表す場合、1つ目の二重結合の場所を、カルボキシル基 (-COOH) とは反対の末端炭素から数えます。オメガ3脂肪酸と呼ばれるn-3系脂肪酸は、3~4番目の位置に1つ目の二重結合を持ち、オメガ6脂肪酸と呼ばれるn-6系脂肪酸は、6~7番目の位置に1つ目の二重結合を持ちます。したがって、オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸とオメガ6脂肪酸のγ-リノレン酸を例にとると、図1に示す構造となります。
図1 α-リノレン酸及びγ-リノレン酸の構造例 (n表記)
cis/trans表記の場合
cis/transで表す場合、二重結合の場所を全て、カルボキシル基 (-COOH) の炭素から数えます。したがってα-リノレン酸及びγ-リノレン酸を例にとると、図2 (a), (b) のようになります。トランス脂肪酸も同様に二重結合の場所を全て数え、バクセン酸を例にとると、図2 (c) のようになります。
図2 α-リノレン酸及びγ-リノレン酸、バクセン酸の構造例
(cis/trans表記)
まとめ
以上、n表記及びcis/trans表記の違いについてご紹介しました。おさらいすると、n表記はカルボキシル基 (-COOH) とは反対の炭素から数え、cis/trans表記はカルボキシル基の炭素から数えます (図3)。どの炭素から数えるかで表記法が変わりますが、どちらも二重結合の場所を示していることに変わりはありません。本コラムをきっかけに、不飽和脂肪酸の表記について意識して見てはいかがでしょう。
図3 α-リノレン酸の表記の違い
あとがき
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