脂肪酸の構造の違いについて①
まえがき
脂肪酸は、炭素(C) および酸素 (O)、水素 (H) の3つの原子で構成されており、脂肪酸の種類によって結合する炭素の数や結合の仕方が異なります。本コラムでは、飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の構造の違いについてご紹介します。
脂肪酸の構造
基本構造
前述の通り、脂肪酸は炭素(C)、酸素 (O)、水素 (H) で構成され、炭素 (C) が鎖状に繋がったものであり、その末端にカルボキシル基 (-COOH) を有しています (図1)。
図1 脂肪酸の基本構造模式図
飽和脂肪酸
炭素は4本の手を持っており、最大で4つの原子と結合することが出来ます。末端のカルボキシル基以外のすべての炭素が1本の手で結合している (単結合である) 脂肪酸を飽和脂肪酸といいます (図2)。飽和脂肪酸は炭素の数によって名称が異なり、例えばC18:0で表される脂肪酸は、炭素数18のステアリン酸となります。
図2 飽和脂肪酸の構造模式図
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は、末端のカルボキシル基以外の炭素間の結合が、2本の手で結合している (二重結合である) 箇所が1つ以上ある脂肪酸のことを指します (図3)。不飽和脂肪酸は炭素数だけでなく、二重結合の数によって名称が異なります。例えば、C18:1で表される脂肪酸は、炭素数18で二重結合を1つもつオレイン酸であり、C18:2で表される脂肪酸は、炭素数18で二重結合を2つもつリノール酸となります。このように、不飽和脂肪酸は炭素数の後ろに二重結合の数を表します。前述の飽和脂肪酸は二重結合を持たないため、C18:0のように炭素数の後ろは0と表されます。
図3 不飽和脂肪酸の構造模式図
トランス脂肪酸
トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸の一種であり、二重結合の炭素に結合する水素 (H) の位置によって、トランス脂肪酸か否か分類されます。水素が同じ位置にある場合はシス型であり、一般的に不飽和脂肪酸と呼ばれるものはシス型です (図4左)。一方、水素が対角線上にある場合はトランス型であり、これをトランス脂肪酸と呼びます (図4右)。例えば、炭素数18のトランス脂肪酸であるエライジン酸は、C18:1 trans-9やC18:1 t9のように表されます。
図4 シス型およびトランス型の構造の違い
構造の表し方
化合物の構造を表す際、単結合は1本線、二重結合は2本線で表し、それぞれの線の先に結合している原子を表します (図5左)。しかし、構造が複雑になればなるほど、すべての原子を書くことが困難になり手間もかかるため、炭素や炭素に結合する水素を省略して表します (図5右)。
したがって、図4のシス型・トランス型を図5右の構造で表すと、図6のようになります。
図5 化合物の構造の表し方
図6 シス型およびトランス型の構造の表し方
図7に、炭素数18の脂肪酸の構造例を示します。この構造から、炭素数がいくつか、二重結合を持たない飽和脂肪酸なのか、二重結合を持つ不飽和脂肪酸なのか、不飽和脂肪酸であればシス型あるいはトランス型なのかを読み取ることが出来ます。
また、不飽和脂肪酸及びトランス脂肪酸は、C18:1 cis-9やC18:1 trans-6のように、cis/transの後ろに二重結合がある炭素の場所を記します。詳しくは次回のコラムにてご紹介します。
図7 炭素数18の脂肪酸の構造例
まとめ
以上、脂肪酸の構造の違いについて簡単に説明しました。おさらいすると・・・
次回のコラムでは、不飽和脂肪酸及びトランス脂肪酸の二重結合の場所の数え方、n-3/n-6やcis/transの表記法の違いについてご紹介します。
あとがき
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